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2022/03/09

第7回 コンタクトセンターの科学:「アーランの基礎①」

アバイア プロフェッショナルサービス シニアコンサルタント 長崎智洋

みなさま、こんにちは。最近この連載を楽しみにしているという声が耳に入って来ました。俄然やる気が出てまいりました。
さて、今回も前回に引き続き、コンタクトセンターの科学ということで、アーランの基礎を説明したいと思います。
この業界にいる方は、"アーラン"という言葉を一度は聞いたことがあると思います。しかしながら、この言葉を聞くと何やら難しく思えてしまうから不思議なもの。
でもご安心下さい。実は覚えることはとても少ないのです。

アーランB式とアーランC式

コンタクトセンターで使うアーラン式は、実はこの2つの式、アーランB式とC式になります。

 アーランB式:必要回線数を求める
 アーランC式:必要エージェントを求める

この二つの存在があることを知りましょう。とりあえず、それでうんちくは語れます。
難しいことはさておき使えるようになることを主眼において行きましょう。

今回の連載ではアーランB式、つまり、"必要な回線数を求める"ことに焦点をおいて説明します。


アーランB式の使い道

前述の通り、必要な回線数を求めるためにアーランB式を使います。
使い道は大別すると以下の2つになりますでしょうか。

①新しいセンターを設立・センターの移転・窓口の集約など新しく回線を引くケース
②既存の回線数を見直す場合

新しく回線を引くケースでは、呼量予測をして、必要な回線を計算します。
また、無駄な回線はそのまま月々のコストとなってしまので、できる限り不必要な回線は休止するに越したことはないでしょう。


呼量(アーラン)について

回線数算出のツールや海外のWebサイトなどでは、呼量の計算を内部的にやっている便利なものがありますが、今回は基礎ということで、呼量(アーラン)を求めるところからやってみましょう。
回線数を求めるにはまずはアーラン(呼量)を求める必要があります。

呼量(アーラン)は、単位時間にどれくらいの呼が入り、1通話の平均の長さがわかれば、求めることができます。

通常、最繁忙時の呼量を使います。一番混んでいる時間に必要な回線を用意すれば、空いている時間帯も満たすことができますよね。

それで、アーラン(呼量)を求める式は、単位時間を1時間とした場合は以下になります。

※ここで言う平均保留時間は、回線を占有している平均の時間のことです。

では次に実際のCMSのレポートを使って、アーランを求めてみてみましょう。


CMSのレポートからアーランを計算してみよう

話を簡単にするために、インバウンド呼に対する必要な回線数を前提に考えてみたいと思います。
使うレポートは、ヒストリカル>トランク/トランクグループレポート>トランクグループ(インターバル/時間帯)になります。インターバルが1時間であれば以下のような式で呼量を求めることができます。

トランクグループ サマリー(インターバル/時間帯)レポート

<画像をクリックしていただくと、拡大してご覧いただけます>

上のレポートでは、インターバルが30分ですので、それを考慮すると分母を調整し以下のようになります。

したがって、例えば以下の場合、
・1時間当たりのインバウンド゙呼(Calls Carr)=120コール
・平均インバウンド占有時間(平均保留時間:Avg Trk Holding Time) =180秒
呼量(アーラン)は、以下の式で求められますね。

さて、冒頭で必要回線数を求めるには、最繁忙時の呼量を使うという話を覚えていますでしょうか?
CMSのレポートには、最繁忙時つまりビジーアワー(Busy Hour)レポートというものがあります。このレポートを使えば、わざわざ、最繁忙時の時間を探さなくとも、繁忙時のレポートを自動的にしてくれます。

ヒストリカル>トランク/トランクグループレポート>ビジーアワー

このレポートは、1度に複数のトランクグループを指定できますのでとても便利です。ただし、日付は自分でピーク日を指定する必要があります。

トランクグループ ビジーアワー レポート


<画像をクリックしていただくと、拡大してご覧いただけます>

ヒント:

VDNレポートにも、ビジーアワーレポートが存在します。


計算ツールを使ってみよう

さて、お待たせしました。前置きが長くなってしまいましたが、今から必要回線数を求めて行きましょう。

今回は、QueueViewという、ICMIが提供するツールを使ってみましょう。
QueueViewでは、必要回線数(Trunks)の他に、必要エージェント数(Staff)や応答時間の分布(Delay)を求めることができます。

それでは、まず、QueueViewを使う前に、トランクグループ毎に、アーランを計算しておいて下さい。
そして、このQueueViewの左のメニューで"Trunks"を選択します。

Queue View - Trunks


<画像をクリックしていただくと、拡大してご覧いただけます>

 

このツールでは、複数のトランクグループに対して、必要な回線数を1度に求めることができます。一番左に計算したアーランを入力、そして、次のボックスにビジーを返してもよいという許容%を入力して下さい。日本では、0%がいいとおっしゃる方がいるかと思いますが、数式の計算上0は許されませんので、最低でも1%と入力して下さい。そして、"Calculate"ボタンを押すと、一番右に必要な回線数(Trunks required)を求めることができます。

さて、このツールの入手方法ですが、「Avaya CMS実践活用研修」に参加すれば特典として無料で入手可能です。また、イー・パートナーズのウェブサイトでも販売しています。


ISDN回線について

話しはちょっと変わって、今回は回線(トランク)にまつわるお話ですので、トランクに使われるISDN回線についてちょっと補足いたしましょう。
最近の傾向としては、通常、デジタル回線であるISDN回線を引くことになると思います。NTTのサービスというとINSネット64、INSネット1500というものがありますが、企業で引くISDN回線は、INSネット1500をお引きになるのが普通でしょう。ISDN回線(INSネット1500)は1本で23回線が束になっています。ちなみに、INSネット64は2回線分です。

したがって、1本のISDN回線追加をすると、一度に23回線分増やすことになります。1回線で23回線も増えてしまうので、必要回線数を計算して1本追加するとかなりのバッファができることになりますね。

ちょっと視点を変えて、計算上で必要回線数ではなく、日々の管理として何か見ておくべきものはないでしょうか?

あります。それが、トランクグループレポートの「全トランクビジー%」です。

トランクグループレポートの「全トランクビジー%」


<画像をクリックしていただくと、拡大してご覧いただけます>

この値は、トランクグループのすべての回線がインターバル内で何%の時間分塞がっていたかをレポートしてくれます。

ヒント:

トランクが全部塞がってしまうような場合、局側でビジーが返っています。1トランクグループが溢れたら次のトランクグループへ流れるようなグループ組みをしている場合は、最終的に呼が流れるトランクグループを参照して下さい。局側のビジーは、交換機に到達する前のビジーですので、CMSのレポートでは取得することはできません。局側に聞く必要があります。

また、ISDN回線のメリットしては、コールフロー(弊社で言うところのベクター)の中でビジーを返すことができます。例えば、待ち呼が5つ以上、予測待ち時間が3分以上であればビジーを返すというものです。
このビジーを返した件数(強制ビジー呼)も、VDNレポートで見ることができます。

VDNレポート


<画像をクリックしていただくと、拡大してご覧いただけます>

ビジーを返すと、さらにビジーを生むことを覚えておいて下さい。したがって、ビジーを使うのであればどれだけビジーを返しているかトラッキングし、きちっと対処してやる必要があるでしょう。"繋がりやすさ"は、顧客がコンタクトセンターに期待するNo1の項目ですので。

おわりに

今回の連載もお楽しみ頂けましたでしょうか?
えっ?やっぱり難しかったですか?
今回も「難しいを面白くわかりやすく」が実践できていればよいのですがね。確かに今回は運用というより、ちょっとシステムチックな内容でしたね。
次回はもう少し運用に絡めたお話になると思います。

さて、本文でも紹介しましたが、今度、「Avaya CMS実践活用研修」が開催されます。今までにない試みでコンタクトセンターの理論と実践が学べる最高の場を提供すると思います。ぜひ受講を検討なさって下さい。この連載ともコラボレーションしています。
アバイアのコンタクトセンターは、日本のたくさんの方にご利用頂いています。このような研修を通して、さらにみなさまのお役に立つことができれば幸いです。

それでは、次回もご期待下さい。

第8回

コンタクトセンターの科学:「アーランの基礎②」
-必要なエージェント数を求めよう

 

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